2005年に発表された、小説家・城平海による、初の描き下ろし小説単行本『Four Seasons』が、加筆修正と新たなあとがきを加え、待望の電子書籍化!

数多くのゲイ小説作品を発表し続ける小説家・城平海による本作は、2005年の東京を舞台に、とあるきっかけでゲイに目覚めてしまった結婚直前の男とその妻を主人公に、およそ1年間の揺れ動く関係性を描いた物語です。発売当時の思い出に触れながら、2021年の今現在想うことを含め、作品制作とその裏側についてお話をうかがいました。

─ 本作『Four Seasons』の紙書籍版の発売から16年が経ちました。電子書籍化にあたり加筆修正を行っていただきましたが、2021年の今現在、読み返して感じるところはありますか?

城平 16年というのは長いようで短いな、というのが率直なところです。もっと時代的な違和感をおぼえるかと思ったのですが、読んでみると意外なくらいすんなり入ってきます。細かい部分での変化はありますが、人間の根っこはあまり変わらないということでしょうか。

─ 城平先生はこれまで数多くのゲイ小説を発表されてますが、その多くが男同士の性的表現が過激(?)なものという印象です(笑)。本作のように、女性を主人公のひとりに設定して、男と男の恋愛だけでなく男女の恋愛、結婚を描こうと思った着想のきっかけは?

城平 私のゲイエロ小説、過激…ですか? 自分のエッチ体験の備忘録代わりに書いていたのですけどねぇ。あ、ウソです冗談です全部想像です!(笑) ゲイ雑誌の読者は大半がゲイの方でしたが、単行本の読者は幅広くなります。ゲイが登場するにせよ女性の存在を無視できません。男女の恋愛から結婚という流れの中にゲイを投げ込むことによって、ゲイ男性の考え方や行動がくっきり描けると考えました。

─ 2005年の当時と比べて、男女の性の在り方や考え方も、変化してきたように思いますが、登場人物の賢治と裕実のキャラクター設定の発想や、ベースにした人物像などは?

城平 確かに、そのあたりはこの16年で大きく変わりましたね。当時の常識が今では時代遅れになっていることが多いです。賢治のキャラクターはゲイの中では希少な、でも確実に存在するタイプです。子どもの頃から世間の常識に乗って、女性と付き合って結婚して、それでもずっと「何かが違う」と感じ続ける人。何かを契機に本来の自分に目覚めると「遅咲きの狂い咲き」になって手がつけられないんですよね、この手の方は。私は16歳から二丁目で遊ぶなど自分を知りすぎていましたが、賢治はそれと真反対の男です。こういうタイプ、個人的に好きなんです。裕実は2005年当時のキャリア志向女性の典型として描きました。とにかく我が強くてアグレッシブ。猪突猛進。今だから言えますが、当時務めていた会社の同僚がモデルです。かなりデフォルメしてますけど。

─ 本作には、東京の様々なスポットや景色が描かれています。現在とは変わってしまったものもあるかもしれませんが、東京という街を舞台に選んだ理由は?

城平 出てくるスポットはだいぶ変わりましたね。無くなった店も多いですし、最終章に出てくる原宿警察署は場所が変わっていますから、昔の位置を知らない方は混乱しそうです。東京を舞台にした理由、それはキレイに言えば「街の懐の深さ」、本音で言うなら「魑魅魍魎」なところです。何が起きても不思議ではない。どんな登場人物も「ああ、いるよねこういう人」と思わせてくれる。そんな街は当時も今も東京だけだと思っています。

─ 夜の新宿二丁目、ゲイバーやゲイクラブ、そこで出会う男たちといった、当時のゲイライフの一端も描かれていますが、当時と今を比べて感じることはありますか? 特にゲイの出会いの形は大きな変化があったと思いますが…。

城平 私自身は夜の街と縁遠くなってしまったのですが、この作品で描いたような、週末ごとにお祭り騒ぎの新宿二丁目は過去の物になりつつありますね。出会いはもっぱらスマホのアプリやSNS、行きずりの行為はそれ専用のスポットというふうに多様化・細分化しました。二丁目をはじめとするバーは、昔のように相手を求めて互いに値踏みし合うギラギラした場所でなく、友人同士や恋人同士が集まるコミュニケーションの場として機能しているのだと思います。

─ 2005年の発表作品ですが、2021年の現代社会が抱える諸問題に通じる表現が随所に出てきます。例えば劇中で、賢治が高圧的な上司から妻や子供について聞かれる場面があります。子供をつくらないことで責められるなら、ゲイである自分や恋人、友人は価値がないのかと賢治が憤るシーンですが…。

城平 先の質問で「性のあり方や考え方が大きく変わった」と答えましたが、その一方で旧態依然とした考え方も一定割合で残っています。社会的に責任ある立場にある人が無理解を晒すケースもまだありますし、企業組織内や個人間ではより頻繁にあると思います。でも今の時代が違うのは、そのような発言が社会から非難されるパターンが確実に増えていることです。数年前に性的少数者を「生産性がない」と評した議員は謝罪に追い込まれ、物議を醸した雑誌は消えてなくなりました。理解を進めようという共通認識が、社会の中により広く浸透しているのを感じます。

─ また、ゲイであることをオープンにして生きるキャラクターも登場します。行政のパートナーシップ制度や、同性婚への動きなど、これらの点も現代に通じるところです。2005年の執筆当時、城平先生ご自身が何か感じていたものがあったのでしょうか?

城平 当時、日本ではまだ何の動きもありませんでしたが、海外ではヨーロッパを中心に同性婚やパートナーシップ法が相次いで動きだした時でした。イギリスのシビル・パートナーシップ法やアメリカ・カリフォルニア州のドメスティック・パートナーシップ制度などです。そのような動きがより大きなうねりになりそうな予感がしていましたね。

─ その一方で、ゲイ同士の恋愛やセックスが刹那的であるという視点も本作には込められています。若くて恋やセックスを謳歌できるうちはいいけど…という。これは結婚という制度に縛られない側面の、もう一つの見方だとは思うんですが…。

城平 そうですね。結婚という枠の外にいるため、出会うのも別れるのも本人たち次第。それはそれで良いことだと思いますが、一時の感情だけでくっつたり離れたりを繰り返すことが少なくないと思います。現在は、日本でもパートナー登録制度を設ける自治体が増えてきています。公的な「届け出」をするかしないかを話し合うことがカップルの結びつきに影響する、そんな場面が出てくるでしょうね。

─ 本作の最後で、賢治と裕実はそれぞれの幸せを得たように見えるのですが、それから16年が経って、彼らはどんな生き方をしていると思いますか?

城平 さあ、どうでしょうね(笑)。裕実は大丈夫だと思います。したたかで時流を読める人ですから。きっと今ごろは出世して、外資系投資会社の役員になっているのでは? ついでに子どもを2、3人産み育てているかも。心配なのは賢治です。2005年から今までの間にはリーマンショックがあって「派遣切り」の嵐も吹き荒れました。荒波を乗り越えられたかなぁ。心身共に元気でいてくれたらいいのですが、どこかでホームレス生活をおくっている可能性もありますね。しっかり者のパートナーと落ち着いた暮らしをしていることを祈るばかりです(笑)。

─ 本作以外にも、城平海名義作品で、数々の小説作品が電子書籍化されていますが、それらの活動や今後の展開についてお聞かせ下さい。

城平 おかげさまで雑誌『G-men』に掲載していただいた作品の電子書籍化は順調に進んでいます。表紙に木村べんさんのイラストを使用しているせいか、木村さんが活躍した時代のゲイ雑誌ファンの方々も読んでくださっています。全作品の電子化にはまだ数年かかる見込みですが、新作も含めて継続していきたいと考えております。それと、過去に発刊した単行本小説が本作以外にあと3作ありますので、こちらも順次電子化していければと思います。

─ 城平海作品の読者の皆様に、ひとことお願い致します。

このたび、元 雑誌『G-men』編集部のろん様のご尽力により、16年前の単行本デビュー作を電子書籍としてお届けすることになりました。当時をご存じの方、そうでない方、どなたでも楽しんでいただける作品だと思います。時間を経て変わったことと変わらないこと、比べながら読んで頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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Profile

城平 海(きひら かい)

1990年代後半からゲイ雑誌『G-men』にアダルト・エンターテインメント小説を寄稿。同誌をはじめ『復刊薔薇族』『SUPER SM-Z』等、複数のゲイ雑誌および小説配信サイトにて、ゲイ向けアダルト小説やエッセイ、レポート記事を発表。2005年よりゲイ男性を含む人間模様を描いた非アダルト小説単行本『Four Seasons』などを発表(現在までに4作品)。現在は過去の小説作品(含、別名義作品)や未発表作品、およびオリジナル新作をKindleにて順次配信中。

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